==AABR==第17章

―――パァン!
「…また、銃声……民家の方から…」
モナカは走っていた足を止めた。そしてまた民家に向かって走り出した。
「レイちゃん…大丈夫、だよね…」
そう思いながらも、足は震えていた。

「……レイちゃん?レイちゃんなの?」
民家のドアが開く音がして、出てきた人影。
(レイちゃんじゃない!)
人影は、人とは思えないような姿だった。
まぁ、クラスで見たことはあるのだが……どうやら宇宙人らしく、
ロボットのような外見で、いつも奇声を発していた。

♪ぴーんぽーんぱーんぽーん♪
『あー、夜も更けてまいりました。皆さん夜這いに気をつけてください。もう女は一人しかいないがな!
 さて、ということで死亡状況と禁止区域の発表だ
【男子20番】ニダー
【男子19番】シラネーヨ
【男子18番】ギコ売り
【女子11番】魔女っ子ニャモちゃん
【男子24番】グルグル君
【男子7番】ッパ
【女子4番】ぁゃなみレイ
 残り少なくなってきたぞー、さぁさぁスパートかけろよー
 次の禁止区域はBの3だぞー、爆死はつまらないから避けろよー』

ぴーんぽーんぱーんぽーん

「え…?」
この放送。この放送によって、モナカは絶望した。
(追いかけてくるって…一緒に残るって約束したのに…)
だが、涙を流している暇はない。
まだ向こうはこちらに気付いては居ない…変な奇声を発しながらウロウロしているだけだ。
            
               人人人人人人人人人人人人
    ξ 人 γ人 ξ┌
    \( оДо)/<  トコロントチャリピカァ!
     巛 彡ソミ 》  └
      ≪  ν ≫   γγγγγγγγγγγγ
((   Θ;;)   (,,Θ

チャンスは、今しかない。
(レイちゃん…敵は絶対とるから…)
そして、銃口をトコ・ロント・チャリ・ピカァに向けた。

              Λ_Λ
               /ハ)ヽ6
       Mw  O二))∀´ ;)_   WwMw
   wM      ==三⊂| ̄ )√|⊃   wMw      
   Www wWwwMw MwWwMw MwW wwM
   从 MwM 从 MwM 从wM 从从 MwwM 从w

――パァン!

(やったか…?)
確かに心臓の近くに向けて撃ったはず。だが、人影は倒れず、こちらを向いた。
(……!効かない!)
よく分からないが、どうやらあの宇宙人には銃弾が効かないらしい。
人影は、だんだんこちらに向かってくる。
(このままじゃ…殺される!)
だが、逃げるわけにはいかなかった。ぁゃなみの敵をとるまでは…
(どうしよう…)
刃物があったら効いたかもしれないが、そんなもの持ってるはずがない。
何か、あいつを倒す方法…
(銃しかないのに、どう倒せば………銃で倒すしかないのか…)
モナカは、銃口をまたトコ・ロント・チャリ・ピカァに向けた。
――ただ、次はトコ・ロントの目を狙って。

―――パァン!

「グァァァ!ドゴロン"ドヂャリビガァ!!」
(やった!目には効いた!)
どうやら、かなりのダメージのようだ。
(何とか…倒して見せるからね、レイちゃん!)

―――パァン!

モナカは、もう一発トコ・ロントの目に向かって発砲した。
(よし!これであいつは目が見えないはず!)
モナカはトコ・ロントに接近し、近くにあった石で思いっきり殴った。
「ウギィィィィ!」
トコ・ロントは叫び続けて、銃を乱射した。だが、その銃弾はモナカに当たることはなかった。
トコ・ロントはやがて動かなくなり、息絶えた。
「…やっ…た…」
モナカは安心感と疲労でその場にへたり込んだ。
「あ…そうだ」
モナカはふと立ち上がり、民家に入った。
「…レイちゃん…」
そこにはなみレイの死体があった。モナカはこの時、はじめて泣いた。
友達になって間もないぁゃなみレイの死体を見つめながら。

「…行こう。」
モナカは涙を拭きながら立ち上がった。
「レイちゃん、この戦いが終わったら…絶対に供養するから…私、勝つから…待っててね」
そう言ってまた走り出した。肩の痛みも気がつけば引いていた。

【残り8人】

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後方から気配がした。何者かが近づいてくる。どうやらこちらに気付いているようだ。
兄者は体を茂みに隠しながら必死に逃げた。しかし、気配はすぐ後ろにまで迫ってきた。
「!!」
木の根につまずき、転倒してしまった。古びた拳銃がディパックから飛び出し、
50㎝ほど先に転がった。手を伸ばし、拳銃を取ろうとしたが、追跡者が
兄者の上を跳んで拳銃を奪い、目の前に仁王立ちになった。
「モ、モララー!」
「ふふふ・・・。君を殺せば残り8人かな?」
「まて!話を聞いてくれ!俺は救助を呼んだ。もうすぐここに助けが来る・・・!」
「そんな嘘じゃ僕をだませないよ。さっさと弟のところへ逝ってきな!」
モララーは兄者の眉間に狙いを定め、引き金を引いた。

―――ドガアァンッ!

突然、拳銃が爆発した。暴発だ。
モララーの両手はふっとび、鮮血が噴出していた。顔や胸も負傷しているようだ。
彼はしばらくは立っていたが、すぐに仰向けに倒れた。
「14式拳銃・・・暴発が多くてな、『自殺拳銃』と呼ばれていたのだ。
使わずにとっておいて、正解だったようだな。」
兄者はそう言うと、自分の服の袖を破り、自分にそうしたようにモララーの
両腕をそれできつく縛り、止血した。
「救助は本当に来る。お前も助かるんだ・・・帰れるんだ。」
そしてモララーを背中に乗せ、壕に向かった。

壕に着くと、念のためモララーを柱に縛り、彼のウージーを持って壁にもたれた。
(あとは、救助を待つだけ・・・か。)
疲れがどっとでたのか、まぶたが次第に重くなり、そして眠りについた。
父者、母者、妹者、そして死んだ弟者と共に楽しく食事を取る、夢を見た。

「ひろゆき様!航空機が本島に接近中であります。」
「ただの旅客機じゃないのか?機種は何だ。」
「・・・ピッ、P3C!空自の哨戒機です。発見されたようです!」
(流石兄弟の兄の仕業か?・・・まあいい、面白いことになりそうだ。)
「よーし、奴を呼べ。このために奴を雇ったのだからな。脱出はさせんぞ。
最後の1人になるまでな・・・。」

何か音がする・・・近づいてくる・・・これは・・・
「飛行機の音っ!?」
兄者は目を覚ました。確かに飛行機のエンジン音だ。
壕からは機影を確認できないが、島の上空を旋回しているようだ。
「モララー、起きろ、飛行機だ!助けが来たぞ!」
「何だ?・・・ヒィッ!やめろ、殺さないでくれ!」
「おちつけ、音が聞こえるだろう?助けが来たんだよ!」
モララーは唖然としていたが、すぐに顔に笑みが浮かんだ。
「・・・本当に?僕たち助かるの?助かるのかい!」
島の全員が気付いただろう。誰もが驚愕しただろう。しかし、
そ の 希 望 は す ぐ に 打 ち 砕 か れ た。

航空機が再び島から遠ざかった、瞬間

爆発音とともに、P3Cの右翼が火だるまになった。
そのままキリモミを起こしながら、海に墜落した。
全員が、その光景を見た。全員が、その光景を信じられなかった。

刑務所屋上、バズーカを担いだ男が炎上する海を見ていた。
「よーし、よくやった。機体は別の奴らが処分する。お前は一旦戻って
待機しろ。傭兵の名は伊達ではないな、クックル。」


【残り8人】

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民家】
暗い民家の中で、ぁゃなみが死んでいる
その眼は天井を見つめ、半開きの口からは赤い赤い血が零れていた

「アーーウーーアーー…」
その闇の中、うめき声が聞こえる
ぞぞぞぞぞ
床から、触手のようなものが生えてきた
それは複雑に絡み合い、一つの異形の姿を織り成す
異形、ぽろろ
「アーーウーーーウーーウーウーー…」
既に明確な意識は無いようだ。幾つもの瞳はそれぞれ異なった方向を見つめ、濁った涙を流している
幾つもの口からは意味を持たない言葉と、涎が垂れ流されている

「ウーーウーアーーアーオーーアーアーアーパパ、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ」
触手の一本が、ぁゃなみの足に触れた
それはゆっくりとぁゃなみの足を貫き、血管を侵食する
さらに幾本もの触手が、ぁゃなみを取り込む
肉を溶かし、骨を砕き、筋を切断しながら…

幾つもの口が、声を揃えて叫ぶ
『『『『命奪う者に、死を』』』』

「ウーアーアーアー。誰も僕に会わないでくれ。僕と出会わないでくれ。もう動きたくない。動きたくない。助けてパパ」
悲痛な叫び。唯一残りしぽろろの意識

ぞぞぞぞぞ
異形は、ゆっくりと進み出した。死の元へと
そして、ゆっくりと地面にその姿を消した

【残り8人】



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